譲渡の際に取得費がわからないときの検討
本日は所得税の確定申告期限となりました。私の事務所はなんとか無事お客様の申告作業が全て完了しほっと一息ついているところです。
相続税申告のお手伝いをさせて頂いたお客様からその後ご相談、ご依頼頂くケースで多いものの一つに相続で取得した不動産の売却に伴う譲渡所得の申告があります。
土地建物等を譲渡した場合、その譲渡益は不動産所得など他の所得金額と合算せず、分離して税額を計算し納付することとなります。譲渡益の計算をざっくり言えば、売値から買値を差し引いて求めますが、買値(取得価額)及び取得時期は相続により取得した場合、被相続人のものを引き継ぎますので、被相続人の売買契約書等があれば良いのですが、残っていないためどうしたらよいかというご相談が少なくありません。
この場合、いわゆる概算取得費として譲渡代金の5%を取得費とすることができます。しかしこれは95%をもうけと考えることになるため、税負担が大きいものとなってしまいます。特にバブルのころに取得していたものを譲渡するなど明らかに譲渡損となるような場合、この概算取得費は受け入れがたいものです。
このようなときにまず税務署に照会してもらうようにお勧めしています。この目的は、今回譲渡した不動産を被相続人が買換え特例の適用を受けて取得している場合があるか否かを確認するためです。税務当局は買換え特例の規定の適用を受けている場合、必ず引継ぐべき取得価額の情報を持っています。それを無視して計算すると結果として過少申告となってしまう恐れが高くなります。そこで、税務署へ来署し、本人確認書類及び相続人が今回譲渡した不動産を相続で取得したことを示す書類(全部事項証明書で良いと思います)を持参すれば、数日を要すると思いますが、税務署より口頭で引継取得価額などの情報を受けることができます。ここで回答が出てくれば計算が可能となります。
税務署からの情報がない、そして契約書などの証拠書類等がない場合、推計の方法を検討します。この推計の方法として比較的有名なものは平成12年11月16日国税不服審判所裁決があります。
この裁決事例では、一般財団法人日本不動産研究所が公表している統計的数値を用いて計算した取得費は市場価格を反映した近似値であり合理的なものとして、建物の取得価額を着工建築物構造別単価から算定し、土地は市街地価格指数を基に算定する方法を示しています。
よって、過去の資料等がないからといって単に概算取得費5%とあきらめてはいけません、合理的な説明、計算を基に推定した取得費をもって申告し取り扱ってもらえる道もあることを是非覚えておいてください。
このページのコンテンツを書いた相続士
- 税理士、CFP、相続士
1973年東京都生まれ。1995年日本大学法学部を卒業し、翌1996年に税理士試験合格。会計事務所勤務等を経て、2003年横浜市都筑区にて税理士事務所を開業。
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