準確定申告について
相続と税金=相続税とイメージする方が多いと思いますが、相続開始でスケジュール的にはまず所得税の申告、いわゆる準確定申告が必要になるかを検討することになります。
所得税は、1暦年間(1月1日~12月31日)における個人の所得(もうけ)に対して課税される税金で基本的に翌年2月16日から3月15日までに確定申告しなければなりません。
そして所得税の納税義務者に相続が開始すると、その死亡した年1月1日から死亡した日までの所得に対して、相続人がその相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に被相続人に係る確定申告書(準確定申告書)を被相続人の死亡時点の納税地(一般には住所地)の所轄税務署に提出しなければなりません。
<例示① 平成29年7月7日に死亡した場合>…4か月以内となるため平成29年11月7日までに提出
<例示② 平成29年1月31日に死亡した場合>…4か月以内となるため平成29年5月31日までに提出
ところで例示②ですが、1月31日に死亡している場合、前年平成28年分の確定申告書について提出することなく死亡していることが考えられますね。この場合は、相続人は5月31日までに
①平成28年分の確定申告書
②平成29年分について1月1日から死亡した1月31日までの1か月分の準確定申告書
の2つの申告書の提出が必要となります。
話を準確定申告に戻しまして、申告にあたり被相続人の所得に関する資料の収集等が必要となります。ごく一般的なものを書き出してみると、
〇給与所得者であれば勤務先の源泉徴収票
〇年金受給者であれば日本年金機構に公的年金等の源泉徴収票 など
これら発行依頼して手許に届くまで時間を要するため、早々に手配する必要があります。その他不動産所得や事業所得がある場合、1月1日から死亡した日までの総収入金額及び必要経費の計算をする必要があります。
また、所得控除に関しても
〇死亡した日までに支払った医療費の領収書
〇国民健康保険、介護保険料、後期高齢者医療保険料の納付(納入)通知書など
〇国民年金の支払をしている場合、控除証明書
〇生命保険料控除証明書や地震保険料控除証明書 など
これらも国民年金の控除証明は被相続人の居住していた市区町村、保険料控除証明書は保険会社に早めに依頼することが必要です。
所得税の計算について自分のことならわかりやすいですが、被相続人のこととなると日頃関わりが薄いと申告を要するものでありながら見逃しやすい点も多いため、被相続人の過去の申告書の提出控え等を基にどのような所得があり得るか、死亡年において特徴的なイベントなどなかったか注意してください。
なお準確定申告は、通常の所得税の申告書の用紙を用います。A様式とB様式と二種類ありますが、B様式はどのようなケースでも使用できるもので、A様式は給与所得、公的年金等その他の雑所得、配当所得、一時所得だけ(例えば会社員や年金受給者、アルバイトの方など)の場合用いることができます。また、細かい点ですが予定納税がないことも必要です。
確定申告書A様式又はB様式を選択したら、通常の申告書記入と異なる点を示すと、申告書第一表のタイトルの空欄に 準確定 と記載し、氏名欄に 被相続人と表記の上で氏名を記載します。なお、通常の申告書の用紙の他、確定申告書付表という用紙の添付が必要になります。ここには各相続人の氏名、住所、続柄等を記入することになっています。
準確定申告の結果、納付が必要になれば同じく死亡から4か月以内に納税することとなり、これは相続税の計算上債務控除として課税価格の計算にあたり控除することができます。
一方還付を受ける場合も考えられますが、複数相続人がいる場合でそのうち一人が代表して受けるときは、他の相続人から代表相続人に対する委任状も申告にあたり添付しなければなりません。この提出がないと還付手続きをしてもらえません。そして還付金相当額は被相続人本来の相続財産になるため、相続税の課税対象になる点も忘れないようにしてください。細かい点ですが、この還付金に還付加算金が付く場合も考えられますが、あくまで還付加算金は相続財産とはなりません。これは申告を承継した相続人自身の所得税の申告で雑所得として扱うこととなります。
準確定申告について大局的に書かせて頂きました。ここに示した以外にも留意すべきことがいろいろあります。判断に迷う場合などは是非専門家からのアドバイスをもらうようにしてください。
このページのコンテンツを書いた相続士
- 税理士、CFP、相続士
1973年東京都生まれ。1995年日本大学法学部を卒業し、翌1996年に税理士試験合格。会計事務所勤務等を経て、2003年横浜市都筑区にて税理士事務所を開業。
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