相続・事業承継に必要なBSを読む力・・・
あいも変わらず、為替も株も、世界情勢や世界のお金の流れの中で、水面に浮かぶ枯葉のごとく、大きな風を受ければ大きく揺れ、小さな風では小さく揺れる、そんな様相を呈しています。
不動産もまたしかり、海外からの投資マネーによりその価格は上下に揺れ動くようになってきました。
北海道のスキー場周辺の公示価格が跳ね上がるかのごとく・・・
こうなってくると、BSに表示されている資産の価格は、まったくの信憑性にかけてきます。
信憑性の高いものは、いいとこ、現預金くらいでしょうか・・・
それにしても、マイナス金利・・・今後、どのように影響してくるのでしょうか・・・?
私が5年前に学んでいた大学院の財務会計論の教授から、日本は取得原価主義会計であるべきと教わりました。
当時は、国際会計基準の導入を巡って、議論が交わされている時代でした。
国際会計基準では、時価会計、いわゆる決算ごとに資産を時価で評価して、期首から期末までの間に増えた純資産分を包括利益と称して、その利益をベースに国際的な会社の判断を行うということだったような記憶です。
これに対して、冒頭、申し上げましたように、ものづくりの国である日本は、ドイツのように取得原価主義であるべしと唱えていました。
英米のような金融取引国家のような時価会計はそぐわない・・・
あくまでも、ものづくりの国家として体制を整えていくべしといったような内容だった記憶です。
現在、日本では、会計上の利益と法人税法上の利益が存在します。
会計上の利益から、納付すべき法人税額を計算するために、会計と税法上の処理の相違点を加算・減算して税法上の課税価格(会計で言う税引前利益)を計算するわけです。
そこに、国際会計基準の発想・・・毎期末ごとにBSの項目を時価評価して、期首と期末のBSを比較し、その純資産の増額を包括利益として、その事業年度の利益として捉える考えです。
この国際会計基準の発想は、今の我が国の経済状況等を鑑みると、個人でも中小企業でも、導入したい発想と思います。
税金の計算とは、また違った、まったく別の概念として、この時価によるBSを作成し、定期的に自分の資産の時価、そしてその状況を的確に把握する。
このことは、とても重要である・・・そのように感じています。
いまや、日本の資産の価値は、安定した価値のあるものは存在しないかもしれません。
不動産・・・?いまや、将来の相場は掴みきれません。
金融資産・・?将来にわたって安心していられるものが、いくつ、存在するのやら
安心、安定を失いつつある日本の資産・・・
そのような資産を上手に運用して、更に、純資産を増やしていかなければなりません・・・
そのためには、定期的に現状分析を行う。
株、投信、外貨、債券、保険、金、等々の金融資産の今の価値は・・・?
不動産の今の価値は・・・?また、将来にわたっての収入の見込みは・・・?
等々、毎期首、毎期末、将来の予測や見通しを建てた資産の現状分析を行う。
劣化した資産はないか、どうフォロー対策をしていくか・・・
リーマンショック前に、いくつかのファンドからみの不動産取引に携わりました。
信託受益権前提での売買です・・・
この取引で初めて、不動産のデューデリジェンスに触れました。
徹底的に不動産の調査を行います。
立地、市場性、建物の構造、耐震性、地盤の強さ、建築基準法の適合(違法性の有無)、賃貸収入の状況と今後の見通し、長期修繕計画、等々・・・
このような細かな調査を行って、初めて、取引の金額交渉に入っていきます。
バブル崩壊後に海外ファンドが持ち込んだこの手法は、個人補償を必要としないノンリコースローンとも相まって、非常に合理的かつ将来のリスク度合いを数値に表し、経営判断のもととしていました。
バブル崩壊前のような時代は、黙っていても、時の経過で純資産は増えていきました。
金利は高い、不動産は毎年値上がり、銀行は不動産投資にお金をつぎこむ・・・
そんな時代でした・・・
当時のBSは、含み益をいかに把握するかという感じで、何もしなくて含み益ですから、現状分析を踏まえたシビアな経営判断を求められることは、無かったような気がします。
どこでもいいから、土地を買え、開発許可をとって、売れ、売れ、とにかく売れの時代でした。
今は、不動産の値上がりは、ほんの一部の都心部に限られ、それも東京五輪を目途に、どのように変貌していくのか・・・
金利はマイナス・・・株価は乱高下の繰り返し・・・
今の時代によりよく財産を承継させていくためには、定期的にBSを読み解く・・・
BSのデューデリジェンスを定期的に行って、現状をきちんと現在の価値で把握してから、対策をうっていく。
自分の所有している資産の市場での価値を、随時、把握しておく。
当たり前のことですが、当たり前のことを、当たり前に継続するのは難しいこと・・・
相続・事業承継対策も、結局は知識的に高度な難しい対策を練ることも大事ですが、まずは、基本として自分の財産を今一度、徹底的に見直しておくことが重要かもしれません・・・
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