相続とお墓 その1
2017年最初のコラムは「相続開始前の準備とお墓問題」に関してお話ししたいと思います。
相続準備というと、とかく遺言作成に目が行き、それのみに終始してしまうことが多いかと思います。意外と軽視されがちなのが「祭祀承継問題」についてです。軽視されがちというより、考える(決める)必要はないと思われがちなのかもしれません。
この問題は大きく分けて2つあり、祭祀承継者となった者とそうでない者との遺産分割問題が一つ。もう一つは承継そのものの問題です。
まず一つ目ですが、祭祀承継者となった者とそうでない者との遺産分割問題。通常、前者は長男、後者は二男等他の相続人となることが多いです。この場合、長男は実家を承継することが多く、他の相続人に代償分割等を行うケースがよくあります。これはこれで全く問題のないケースです。
しかし、このような一見全く問題のないケースでも若干相続人間の心に波打つことがあります、ささくれ立つとでもいいましょうか。或いは、長男だけが得をしているようで納得いかないという相続人が存在し、遺産分割協議が進まないということもあります。
これは金銭的な問題(数字のみ見た)だけ比較して、他の要因の一切考えていないことがほとんどです。
長男が祭祀承継者として実家を承継する場合、付随する負担があることを忘れられがちです。祭祀承継者となった者は、神社や氏子、祭り等の時の町内会、お寺、親戚づきあい、それらに付随する費用の負担など、祭祀承継者以外は関知することのない様々な精神的負担や費用的負担がずっと続くわけです。遺産分割協議をする時には考慮しなければならない重要な要因であることは間違いありません。
この点に着目していただくと、遺産分割協議の際に祭祀承継者である長男とその他の相続人との間で、実家の不動産の承継問題が発生した場合には、単なる数字だけではなく前述した付随する諸々の負担も考慮することで遺産分割協議の着地点が見えてくることもある、ということがご理解いただけるかと思います。相続の専門家である相続士は、相続人の気づかない点を気づかせて、遺産分割協議の考え方をアドバイスすることも重要なことだと思います。
二つ目の承継そのものの問題に関しては次回にお話ししたいと思います。
このページのコンテンツを書いた相続士
- 行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所
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