不動産の分割と遺産である「空き家」

遺産分割をする上でキーとなるのは、相続人が誰であるかを除き、遺産の内容です。とりわけ不動産がある場合、不動産の分け方や不動産そのものの性質が遺産分割協議を左右することが往々にしてあります。

まず不動産の分け方についてみてみます。

分け方として代表的なのは、「現物分割」として相続人の誰かが(例えば長男が)当該不動産を単独で相続するというものです。これが一番現実的であり、スムーズに遺産分割が行える方法といえます。家督相続が当たり前の時代ではこのような方法が当然のごとく行われ、「家」というものを守ってきました。最近の相続であっても、代々承継してきた土地や建物を遺していこうとする場合には、真っ先に検討される方法となります。

次に、現物分割が難しい場合に採られる方法として「代償分割」というものがあります。

例えば、被相続人の遺産が自宅不動産と預貯金少々で、相続人が複数人いた場合、一人の相続人が被相続人の自宅不動産を単独相続すると、金額で比較したとき、当該相続人が他の相続人より多額になってしまい、相続人同士のバランスが取れなくなってしまうようなケースがあります。このようなケースでは、被相続人の自宅不動産を単独相続した当該相続人が他の相続人に対して、「その代わり」に当たる「代償金の交付」を行うというものが「代償分割」というやり方になります。代々承継してきた土地や建物を遺していきたいけれども、様々な理由から、現物分割で承継人に単独相続できない場合などに、利用される分割方法ですが、代償金を用意しなければならないという点がネックになることもあり、生命保険の利用と併用する対策方法として検討されることが多い分割方法です。

三つ目として、「換価分割」という方法があります。これは文字通り、不動産を売却して(換価して)得た金銭を相続人で分けるというものです。当該不動産が不要であったり、不動産の分割がどうにも上手くいかなかったりした場合などに採られる分割方法ですが、必ずしもすぐに売却できるとは限らないというリスクもありますし、売却されるまでの間の実務的な管理や管理費用の負担の問題なども浮上してきますので安易な選択は避けたいものですが、方法論としては検討してみたい分割方法ではあります。

そして誰もが公平な分割方法として勘違いしてしまう「共有による分割」があります。「共有」は分割の仕方に迷った挙句「取り敢えずの処置」として採られるケースが多く、問題の先送りにしかなりません。いわゆる「縦の共有」はOKですが「横の共有」は特別の事情がない限り避けるべき方法です。

遺産分割を左右する不動産の分け方ということでみてきましたが、不動産の性質も遺産分割を左右することにもなります。不動産の性質とは、どういう不動産なのか、ということです。相続人から見た場合に魅力ある不動産なのか、魅力のない不動産なのか、相続人にとってどういう性質の不動産なのかによって、遺産分割時の対応が変わってきます。その一つとして、遺産である不動産がすでに「空き家」だった場合には問題となってくる可能性が高くなります。当該「空き家」を相続するか否かという判断が必要になってきてしまうところですが、相続した「空き家」を相続後に売却という方法も検討されることと思います、その際に税制上の特例があることもチャックしておきたいところです。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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