証人不適格者が同席して作成された公正証書遺言の効力

遺言を作成する際に自筆証書遺言にするか公正証書遺言にするか迷われる方も多いと思います。どのような主旨で作成しようとしているのかによっても変わってきますが、多くの場合公正証書遺言での作成を選択するのではないでしょうか。

公正証書遺言で作成すれば相続開始後の相続手続きが自筆証書遺言に比べて容易になるというメリットがありますが、作成時には手間と費用がかかるのがデメリットとも言えるかもしれません。

公正証書遺言を作成する際には法律で決められた方式に従わなければなりません。その法律に規定されている方式の最初に書かれているのが、「証人2人以上の立会いがあること」です。

自筆証書遺言と違って公正証書遺言の場合には“証人”が必要になってくるのです。

この証人、誰でも良いのではなく、証人になれない人について「欠格事由」として規定されています。

欠格事由は、

① 未成年者

② 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族

③ 公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人

と規定されています。

この欠格事由に該当しなければ公正証書遺言作成時の証人となることができます。

では、この欠格事由に該当する者が公正証書遺言作成時に同席していた場合にその公正証書遺言の効力に影響はあるのでしょうか。

受遺者の長女(直系血族)が同席していた事例で、判例では以下のように述べられています。

「遺言公正証書の作成に当たり、民法所定の証人が立ち会っている以上、遺言の証人となることができない者が同席していたとしても、この者によって遺言内容が左右されるなど特段の事情のない限り公正証書遺言は無効ではない。(最判平13.3.27)」

判例が出ているということは争われたということですから、原因を辿ると、証人欠格事由に該当する者が遺言作成時に同席していたということが証人と間違えられる状態にあったのかもしれないということが考えられます。

相続はただでさえ争いに発展する要素が多く、個人の解釈によって変わってくるものも多々ありますから、そのような芽はあらかじめ摘んでおくことが望ましいですし、ましたやそのような芽を植えるようなことは避けなければなりません。

遺言も争い防止の手段としても認識されていますが、作成内容・作成方法によっては争いの元にもなりかねませんので、できれば専門家に相談をして、アドバイスを受けながら作成することが望ましいと言えます。

今回はレアなケースのお話をしましたが、相続は百人百様というくらいに個々の家族によって変わってきますので、うっかりしていると何が起こるか分かりません。色々なケースを想定しながら準備を行えると良いと思います。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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