相続における非嫡出子の問題…相続法改正で解消なるのか

相続における非嫡出子の立場というのは嫡出子の相続分の2分の1というものでしたが、約5年前の平成25年9月の最高裁の判決により、非嫡出子と嫡出子の相続分は同等となりました。あの判決からもう5年近く経っているのかと思うのは筆者だけでしょうか。

非嫡出子とは、婚姻関係にない男女間に生まれた子のことをいい、父子関係においては認知を必要とします。相続においては父の認知がなければ相続権はありませんが、認知をした場合には嫡出子と同等の相続分を承継する権利が発生します。ここに微妙な問題が起こる原因があります。

認知の方法は戸籍法の定めるところによる届出か、もしくは、遺言により行うことができますが、遺言の場合には遺言執行者を指定しておかなければなりません。また、強制認知という訴訟(認知の訴え)という方法もあります。

認知の対象となるのは未成年者に限らず、成年に達した子も認知することができますが、その場合その子の承諾が必要となります。また、胎児も認知することができますが、母親の承諾が必要となります。

そして、認知の効力は出生の時に遡って発生します。

認知によって非嫡出子は嫡出子と同等の相続分を承継する権利を有することになりますが、先にも申し上げたとおり、ここに微妙な問題が発生します。

相続というのは、多くの場合、家族の問題と捉えられることと思います。この家族の問題に非嫡出子という存在を受け入れることができるか、ということが高いハードルとなるのではないでしょうか。

被相続人の財産というものは、その親から承継したものもあれば、結婚してから配偶者と共に築いてきたものもあります。事業や商売などをしていれば、そこに生まれた子は当然のごとく、その事業や商売の影響を受けた人生となります。いわゆる「家のお手伝い」というのが小さい頃より当たり前のように日常化し、友達と遊ぶ時間も少なくなることも珍しくないかもしれません。

子供だけでなく配偶者も当然のごとく苦労して共に財産を築いていく訳です。

そのような環境下で相続が発生し、そこに非嫡出子が現れたらどうでしょうか。

私の相続分は嫡出子と同等です、と主張されたらどうでしょうか。

配偶者も子供もすんなり受け入れることは難しいことでしょう。

非嫡出子の側からみた場合にはどうでしょうか、裕福な環境で育ってきた場合を除き、嫡出子との生活環境の差を感じながらの人生だったことも考えられます。

こうなると両者の主張はぶつかり合い平行線をたどる可能性が大きくなります。

嫡出子の側からみれば、日本特有の「家」の付き合い、という苦労もあるかもしれません。

どちらにせよ、難しい問題が発生するのは目に見えています。

法律の世界では「嫡出子も非嫡出子も同等」とし、平等感を出したのかもしれませんが、法律的な平等感と実際の平等感とは一致しません。そもそも相続における完全なる平等は存在しないと筆者は考えています。

約5年前の「非嫡出子は嫡出子の相続分の2分の1は違憲」という判決から始まった今回の相続法の改正、法律と実務の乖離は埋まることはなく、法律の規定に沿いながらも実務上臨機応変に対応しなければならないことが今後も増えてくると予想されます。

「法律的な解決」だけでなく「人の感情面の解決」の両方を満たす遺産分割が必要になってくるのではないでしょうか。

相続を全体的に上手くマネジメントするハイブリッドな専門家が求められてくることでしょう。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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