相続の結果としての空き家…何故?

 

最近問題視されている「空き家」はどうして発生するのでしょうか。

「空き家」発生にはいくつかの原因があると思いますが、その代表格が「相続」です。

相続というのは亡くなった方(被相続人)の財産を家族等(相続人)が引き継ぐ制度ですから、家も引き継ぐから「空き家」にはならないのではないか、という疑問を持たれるかもしれませんが、相続の仕方や遺産としての「家」の性質(各家庭によって変わってきます)によっては「相続」が原因で「空き家」になってしまう、もっといえば「住む人がいなくなった家」が「相続」を原因に放置される状態になってしまうということになりかねないのです。

では、相続が原因で「空き家」は発生するというのはどういうことなのか、2つのケースを挙げてみていきたいと思います。

<ケース1:承継する相続人がいない>

直系卑属である子供がいる場合でも、自分たちの生まれ育った家を承継しないというケースがあります。現代の住宅事情から言って、昔ながらの農家で広い敷地を所有している家庭を除き、将来を見据えて広く大きな家を構えるのは難しく、長男が結婚して直ぐにそのまま親と同居するというのは難しい現状があります。

ですから、子供達は結婚を機に(あるいはその前に)家を出て、自分たちの家を持つということが多くなってきています。その結果、一次相続、二次相続の後、住む人が居なくなった家をどうするかという問題が出てきます。家を出た子供が戻ってくるのであれば問題ありませんが、自分たちの家を既に持っていた場合、戻ってくる可能性は低くなります。

また、築後数十年経過していると修復しなければならない等で出費がかさむこともあり問題化することもあります。

そして、実家が地方で子供達の現在の住まいが都心である場合は、家を出た子供達にとって、「利用価値の低さ」や「メンテナンスの煩わしさ」なども問題化してきます。

このような場合には「不要な家」となり承継する相続人がいないというケースに繋がります。

 

<ケース2:共同相続人全員の共有>

相続開始後に共同相続人全員で行わなければならない作業として「遺産をどのようにして分けるか」という話し合いである「遺産分割協議」があります。その時に問題となるのが「容易に分けることのできない不動産」です。

分け方が決まらずに困り果てた共同相続人はこう考えるのです「みんなで共有にしよう、共有にするのが一番平等な方法だから」。

一次相続のうちはまだそれで良いかもしれません、片方の親が住んでいますから。

しかし、二次相続が開始して誰も住まなくなったとき、共有状態を解消しなければそのままの状態で、結果的に放置されてしまう可能性が出てきます。

最初の共有は親子兄弟姉妹の共有ですが、そのまま放置して共有者に相続が開始した場合、配偶者という他人が共有名義に入ってきます。1人ならまだしも2人、3人と増えていく可能性もあります。

「誰も住まなくなった家」を売却するには「共有者全員の同意」が必要になります。この時、1人でも売却に反対する者がいたら売却はできません。

そうするうちに、共有者の相続が開始してどんどん他人である共有者が名を連ね、結果的にどうにもできない状態に成り果ててしまう可能性があります。

平等と思って始めた「不動産の共有」が、結果として「どうにもならない不動産」にしてしまう可能性があるのです。

 

「住む人がいなくなった家」が「相続」を原因に放置される状態になってしまう原因を理解して、「放置されない家にするにはどうするべきか」を考えて、予め、話し合い準備しておく必要があるのではないでしょうか。

 

 

 

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

相続士資格試験・資格認定講習のお知らせ

日本相続士協会が開催する各資格試験に合格された後に、日本相続士協会の認定会員として登録することで相続士資格者として認定されます。また、相続士上級資格は上 級資格認定講習の修了にて認定されます。