宣誓供述書も手段の一つ

争族対策として遺言の活用が一般的となってきていますが、遺言の作成方法に間違いや不足があると遺言があるがために争いになるなんてことにもなりかねません。

遺言には法的効果のある遺言事項と法的効果のない付言事項という2つの柱があります。遺言事項というのは相続分の指定や遺言執行者の指定など遺言の根幹を成すものとなります。この遺言事項の内容が最も大切なものであり、争族防止効果に基本となるものであることは間違いありません。しかし、これは「予め相続分や分割方法を決めて」おいたり、「遺言執行者を決めて」おいたりと、あくまでも争族防止効果に基本部分でしかありません。

肉付けが必要となります。それが付言事項です。10数年前までの遺言は遺言事項がしっかり書かれていれば良しとする傾向にあったようですが、相続における争いが多発していることが認識されるようになってからは付言事項をプラスすることを推奨するようになってきました。(余談ですが、付言事項で感謝の気持ちを表すでは争族予防策として足りません、もっと大切なことがあります。)

しかし、インターネットで自ら相続や遺言に関する情報を得ることができたり、権利の主張が強い昨今においては、付言事項が書かれていても納得できないというケースもあるかもしれません。特に、遺言により他の共同相続人より不利な扱いを受けてしまった相続人がいる場合には遺言事項だけでなく付言事項を含めて、本当に本人の意思表示なのか疑わしいと主張するかもしれません。遺言無効の訴えに繋がるケースです。

このようなことが考えられるケースでは予備的に「宣誓供述書」の利用も検討する余地があると思います。

「宣誓供述書」というのは「宣誓認証制度により宣誓認証を受けた文書のことです」

「宣誓認証制度」について簡単に説明しますと、公証役場において公証人の面前で自分で作成し署名捺印した文書(証書)の記載が真実であることを宣誓した上で、証書に署名もしくは押印、または証書の署名もしくは押印を自認したとき、公証人がその旨を記載して認証する制度です。

どのような効果があるかと言いますと、自分で作成した証書について内容が真実であることを公証人の面前で宣誓して公証人が認証しますので、公証人が当該証書について作成の真正を認証するとともに、証書の記載内容が真実・正確であることを作成者が表明したという事実を公証しますので、本人の意思表示であり、本人が作成したものであることは間違いないという証明になります。

利用例としては、遺言による推定相続人の廃除の理由を宣誓供述書に記載して遺しておくというものが挙げられます。推定相続人の廃除というのは相続権を奪う行為なので、かなり重要であり深刻であり難しい問題です。廃除された推定相続人は遺言無効を主張する可能性がありますが、遺言者本人の意思により作成された宣誓供述書があると審判となったときには効果的であり、それ故に遺言無効の訴え自体も起こさないという悲惨な争いを未然に防ぐ効果もあるでしょう。

それ以外にも、様々な理由により偏った相続分・分割方法の指定を行わざるを得ない場合などには付言事項だけでなく宣誓認証制度の利用も検討の余地があるのではないかと思います。

最後になりますが、遺言作成時には遺言事項のみならず付言事項についてもしっかりと内容を吟味する必要があります。付言事項をしっかりとしたものにすることで争い防止の手段とすることは可能ですが、場合によっては「宣誓認証制度」の利用も予備的に手段の一つとして考えておくのも良いのかもしれません。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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