自筆証書遺言作成時の注意点とは?

遺言を作成する上でまず最初に迷うのが、自筆証書遺言か公正証書遺言かということだと思います。秘密証書遺言というものもありますが、あまり一般的ではないので今回は割愛させて頂きます。

自筆証書遺言か公正証書遺言かの選択時に費用の問題や作成し易さの問題が浮上してきますが、作成し易さと費用の安さから見ると自筆証書遺言という選択になると思います。

誰にも邪魔されず、思いにふけりながら、自宅の一室で書くことができるということを考えると自筆証書遺言を選択する人が多いのかもしれませんが、気をつけなければいけないことがあります。

まず第一に、法的要件を満たさなければならないということです。遺言の全文、日付、氏名を自書することと、押印することが基本的な要件となります。

日付は、遺言作成日の特定に重要ですから、「令和元年11月1日」などのように明確な日付を書く必要があります。「令和元年11月吉日」などのように日付が特定できないような書き方ではダメです。「令和元年の誕生日」というのは本人の誕生日として特定できますから大丈夫なのですが、ここまでの文字数を書くのであれば、「令和元年11月1日」などのように明確な日付を書くことをお勧めします、もし、何か思い入れがあるのであれば「令和元年11月1日(誕生日)」などのような工夫をしてみてはいかがでしょうか。

法的要件の中に「押印」があります。認印でも構いませんし、拇指その他の指頭に墨や朱肉等をつけて押捺すること(指印)も認められていますが、特別な場合を除いて、しっかりと印鑑を使用する方が良いでしょう。それも、後々のトラブルを防ぐために、実印を使用し印鑑登録証明書を添付しておくと良いと思います。

氏名の自書に関しては、本人と特定できるのであれば通称でも構わないという判例もあるようですが、これは素直に「戸籍上の氏名」を確実に書いておくべきでしょう。

そして、今までは財産目録を添付する場合にはその財産目録も自書しなければなりませんでしたが、民法改正により、添付する財産目録は自書を要せず、他人の代筆、パソコンによる作成、登記事項証明書や預貯金通帳の写し等でも可能となったことは既にご存知のことかと思います。添付でOKといってもその目録の毎葉に署名押印をしなければならないという要件が課せられています。

この財産目録の添付という新しい制度で、自筆証書遺言の作成が容易になったことは確かですが、新たな問題として、自書した全文と添付する目録との「一体性の問題」というものが発生してしまいます。この目録はこの全文と一体のものなのか否か、という問題で、特に遺言の有効性を問題にして遺言無効を訴えようとする者にとっては標的となり易いといえます。

こういう問題があるということを把握した上で、自筆証書遺言を作成していかなければなりません。

自筆証書遺言作成というと遺言者が1人でひっそりと書くようなイメージがあるかもしれませんが、法的に有効で、後々トラブルにならないような遺言を作成するためには専門家のアシストも必要かもしれません。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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