争族にならないために専門家に依頼するタイミング

相続が争族といわれる根本的な原因は遺産分割にありますが、遺産分割で揉めるのは”分け方”が決まらないことが大本にあります。

相続人間で遺産の”分け方”を決める際、話し合いを複雑にしてしまう要因としては、遺産そのものの性質もありますが、共同相続人の家族としての歴史や各相続人の個人的な性格・現在の生活状況など様々なものがあります。

そういった複雑な状況下に”あるひとつの投石”があるともっと複雑になってしまうことがあります。その”あるひとつの投石”とは何かというと、”専門家の関与”です。

緩やかな波立ちの水面に石を投げ入れると大きな波が立ってしまい、2つ3つと石を投げ入れると更に大きな波になって終息まで時間がかかってしまいます。

漠然とした例えをしてしまいましたが、代表的な例でいえば、遺産分割協議の途中で長男が他の相続人には何の相談もなく弁護士をたてて(第1の投石)きたことで、二男は別の弁護士に依頼し(第2の投石)、長女も独自で弁護士を代理人とし(第3の投石)、遺産分割協議は3人の弁護士が代理人として行うことになってしまった、というようなことが挙げられます。

この場合、何が問題だったかというと、遺産分割協議の途中で長男が二男や長女に相談なく弁護士を自分の代理人としてたててきたことです。長男なりの考えや思いがあるのでしょうが、「途中で」と「何の相談もなく」という点は問題になりやすい点です。二男や長女の感情に一方的に波を立ててしまったわけですから。

分割協議がまとまらずに止むを得ず「調停」を行なうために「途中で」弁護士に依頼することはありますが、話し合いをすること自体を面倒と感じて弁護士に依頼するなんてこともあり、その場合、そのことが引き金となって”大きな争い”になってしまうこともあります。

相続問題というのは共同相続人の数や属性等、あるいは遺産の種類等によって、遺産分割協議をまとめて各種相続手続きを行なうことが大変難しいことがあります。

そのような場合には「相続の専門家」に依頼することは必要なことであると言えます。

その際に気を付けなければならないのは、専門家選びと依頼のタイミングです。

前述の例えでは弁護士さんを例にお話ししてしまいましたが、これが税理士さんや司法書士さん、行政書士さん等であっても同じようなことが起こり得ます。

ですから専門家選びというものは様々な選択肢となり得ますので、”信頼できる””任せられる”と思える専門家を選んで頂き、共同相続人全員納得の上で、『最初から』依頼をして頂くことが最良の方法だと思います。

『最初から』依頼することで専門家もどのような形で進めていくか計画を立てることができ、共同相続人全員が納得の上ということでその専門家を中心に話し合いや手続きが進めやすくなります。

相続の現場では相続人の感情がぶつかり合うこともあります、それを調整する(交渉ではありません)専門家が必要なことは多分にあります。

一部の相続人のためではく、相続人全員のためを考えて支援してくれる専門家を選び、『最初から』依頼することが争いを避ける方法の一つといえるのではないでしょうか。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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