相続と親族

 相続において相続権を有する者(相続人)は民法に定められている法定相続人だけです。法定相続人には、配偶者相続人と血族相続人がいます。血族相続人は、被相続人の直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹となることは既にご存知のことと思います。改正相続法が施行されるまでは、相続の現場で登場する権利者は原則的にこの法定相続人だけでした。

改正相続法が施行され、新しい制度が創設されたことで、(あくまでも見方によってですが)、緩和と混乱が入り混じった新たな相続の現場が発生しうるのではないかと思います。

例えば、「特別寄与者の寄与料請求権」という新たな制度では、共同相続人間(相続権を有する者だけ)で行なわれてきた「寄与分」に関する協議が、「相続権を有さないが被相続人に特別の寄与をしてきた被相続人の『親族』に該当する者」を加えたものとなり、遺産分割と同時進行か否かは別として、相続という大枠の中では、共同相続人とは別の権利を有する者が加わることになる訳です。

今までは、法定相続人は誰か、ということだけをみてきましたが、今後は「特別の寄与」という点を考えた場合には、「特別寄与者」の要件である「被相続人の親族」という点もみていかなければなりません。

親族は、一般的には血縁(姻戚)関係の人達を意味し、多くの場合、親戚という言葉で表現されますが、民法上は、①6親等内の血族、②配偶者、③3親等内の姻族、と規定されています。

血族には、出生によって生じる自然血族と、養子縁組によって生じる法定血族があります。

姻族とは、自己の配偶者血族(例えば、夫からみた妻の父母)、または、自己の血族(例えば、兄弟姉妹)の配偶者、のことをいいます。

親等は、自己からの親族関係の近さを表す単位となります、数字が小さいほど自己との関係が近いということです。

6親等内の血族は、直系卑属では六世の孫までが該当し、直系尊属では六世の祖までが該当(現実的ではありませんが)します。兄弟姉妹は、父母(1親等)を経由してカウントするので2親等となり、兄弟姉妹の玄孫までが該当します。

3親等内の姻族は、自己の配偶者の曾祖父母や甥・姪までが該当します。

お分かりのように、親族といっても範囲が広すぎますので、親族に係る法律的効果も範囲を限定した形で個別に規定されているのが現状です。

「相続権」は、親族という広い範囲の中でも限定された範囲の者に認められています(例えば、兄弟姉妹の代襲相続人は3親等の甥・姪までです)し、「扶養義務」も配偶者・直系血族・兄弟姉妹を基本として、特別な事情があるときは3親等内の親族に義務を負わせる、という規定になっています。

相続問題として浮上しがちな「介護の問題」に、前述した「特別寄与料請求権」の問題がありますが、長男等の配偶者は、被相続人の「3親等内の姻族」となり、親族という要件を満たします。

場合によっては、被相続人の配偶者の兄弟姉妹の子(甥・姪『3親等内の姻族』)が関係してくるかもしれません、この者たちには相続権が発生することはありませんが、生活環境等の様々な条件によっては、被相続人と近い関係で生活をし、介護に関わることもあるかもしれませんので、相続という大枠の中では「特別寄与料請求権者」という立場で関与してくる可能性があります。

今後は、相続の関係者(当事者)の確認においては、法定相続人のみならず、介護を伴う場合には介護をした者の親族としての位置関係まで確認する必要性が出てきました。

相続対策や相続手続きを行なう際、介護を伴う場合には、その点も含めて考える必要性もありますから、専門家に相談することも視野に入れておくべきでしょう。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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