相続で揉めないために気を付けたいこと

 相続は争族(争続)と例えられるほど「争い」になり易いものです。この争いは「遺産の分け方」をどうするかで起こることですが、「話し合いがまとまらない」という根本的な問題以外にも原因があるケースも多々あります。

「話し合いがまとまらない」という根本的な問題は、相続人各自の事情や「感情問題」等が関係してきますので大変難しい問題ではありますが、この問題を水面下に押さえられる場合と浮上させてしまう場合があります。

水面下で押さえられる場合とは、心にわだかまりを持ちつつも理性で押さえ、個人的な欲も押さえ、なんとかまとまるように相続人各自が「心の努力」をしている状態で、粛々と手続きが進められていきます。

相続人の本心は分かりませんが、争いが起こる事もなく、無事に相続手続は終わります。

しかし、相続人が「心の努力」をしようとしているとき、あるいは、何の波風も立っていないときでも、ちょっとしたきっかけで相続人の感情に波風が立ってしまうことがあります。

こうなると水面下で押さえられていたものが浮上してきてしまうので、「争いの芽」が発生してしまいかねません。

相続発生後には様々な相続手続きがありますが、まず行わなければならないのが「相続人の確定」です。

「相続人の確定」により、当該相続における相続人が判明しますが、兄弟姉妹ならまだしも、代襲相続人が混在したり、共同相続人全員が代襲相続人だったり、非嫡出子(認知済)が混在するケースもあり得ます。

共同相続人が確定した後は、中心となる者(大抵は一番の年長者、あるいは、それに次ぐ者等)が話を進めていくことになりますが、問題はこのスタート地点であり、「争いの芽」を自ら発生させてしまうか否かの分かれ道になることがあります。

日常的に接点のある兄弟姉妹ならあまりないと思われることですが、兄弟姉妹でも間柄が遠い関係(何年も会っていない等)や、代襲相続人同士のように普段接点のない間柄の場合等には、どのように話を進めていっていいのか分からずに専門家を頼ることになると思います。

このとき頼る専門家を選ぶのに一苦労すると思いますが、選んだ専門家に「全てお任せ」の依頼をしてしまうと、その専門家のやり方にもよるので一概には言えませんが、「揉める」方向に進んでしまう可能性があります。

一般の方の多くは専門家と言っても見ず知らずの者からいきなり連絡が来たら身構えてしまい、「何で、いきなり?」という「疑いの思考回路」がスタートしてしまい、感情的に波風が立ち始めてしまいます。

筆者のところにも同じような相談が舞い込んできます。多くの場合、中心となる者からの説明がおざなりで、いきなり専門家から連絡が来た、どうしたらいいのか、というようなもので、このような場合いきなり専門家から連絡を受けた側は困惑してしまうのがほとんどです。

必要なのは、相続手続の中心となる者からの説明であり(これが疎かにされていることが多くあります)、専門家を交えることの(承諾のための)連絡です。

普段交流のない者への連絡は難しいことかもしれませんが、専門家のアドバイスや支援を受けながらでも、最初に相続手続の中心となる者の名前でしっかりと連絡をしてから、専門家を交えた形での相続手続きに入るのが妥当だと思います。

相続手続を支援する専門家だから全てお任せ、というのではなく、可能な限り、当事者からの「最初の連絡」をしっかりとしておくことが、揉めない相続の第一歩ではないでしょうか。

このページのコンテンツを書いた相続士

中島 浩希
中島 浩希
行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所

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