相続士ビジネスに関する考察
相続士のビジネスの中核はもちろん「相続」ですが、最近では「相続」という観点だけではなく、それを取り巻く周辺の事柄が相続より先に問題視されてきたり、本人やご家族等から話題にされたりすることが多くなりました。
例えば、介護の問題、認知症の問題、お墓の問題などです。
相続の看板を掲げている専門機関も相続周辺の問題を取り上げることが多くなり、SNSなどではひっきりなしに掲載されています。
一時期は、相続と終活というようにあたかも別の事柄のように扱われていたこともありました。もちろん終活には相続問題が関わってきますので、リンクすることはあるのですが、「終活」+「相続」というような認識の時期もあったのではないでしょうか。
これからは、「相続問題」「終活問題」と分けるのではなく、個々の問題(例えば、介護の問題、お墓の承継問題など)が入り口となり、最終的に相続手続やその後のアフターフォロー等へと繋げていくビジネスが主流となり、かつ、必要になっていくのではないでしょうか。
ですから、窓口としては大きく広げておく必要があります。
認知症になってしまったらどうする?今のうちに何かできることはあるのか?
介護状態になったときに自宅で面倒を看てくれる者がいない、どうする?
施設入居か?在宅介護か?
相続人がいないので葬儀やお墓はどうする?
自分の死後の後片付けはどうする?
お墓の承継者がいなくなる、現在のお墓の維持が難しい、どうする?
親の死後誰も住まなくなった実家の後片付けはどうする?
など、個々の状況に応じて、相続問題より先に様々な個々の問題に話が進んでいくことは珍しくありません。本人のみならずご家族や親族、友人知人等の関係者(おひとり様の場合には友人・知人等が関係当事者となることがあります)からも問題提起されます。
このような問題は、ご家族や親族、友人知人等の関係者(おひとり様の場合には友人・知人等が関係当事者となることがあります)も加わって準備をしていくというのが望ましいのではないかと思います。
「本人の人生の終末に位置付けられる時期」と「本人の死亡後の遺族等による生活の再構築の時期」を、経産省の報告書において「ライフエンディング・ステージ」と定義されており、この時期における本人やご家族・親族・関係者等に関わる様々な問題に対して準備をしていくことになりますが、「本人の人生の終末期」と「本人死亡後の遺族等の生活再構築期」をシームレス(継ぎ目なく)にサポートできる専門家あるいは専門機関が今後は求められてくることでしょう。
例えば、遺言作成をサポートした専門家あるいは専門機関が、遺言作成だけではなく本人の生前のQOL(Quality of Life)維持・改善等の支援、ご家族の看取りのための支援、本人死亡後の相続手続き支援、葬儀・お墓に関する支援、遺品整理等の死後の後片付けの支援など、本人のためだけではなく、ご遺族や関係者等が日常の平穏な生活に戻るまでをトータルでサポートすることが求められてくるのではないかと思います。
しかし、残念ながらこのような事柄を全て一人で対応可能な専門家など勿論いません。
重要なのは、しっかりとしたネットワークを持っていて必要に応じて確実にそのネットワークが機能することです。
相続士は、相続を専門としながらもそのネットワークの中心で全体をマネジメントしながら進めていく役割を担う存在でありたいと思います。
窓口(きっかけ作り)を広げるためにも、また、ネットワークを作り機能させるためにも幅広い知識の習得が必要になってくるのではないでしょうか。
相続士個々の努力が必要になってきますが、「相続士+α」を目指して頂きたいと思います。
このページのコンテンツを書いた相続士
- 行政書士、宅地建物取引士、相続士上級、CFP
東京都小平市出身。法政大学経済学部卒。リース業界・損害保険業界を経て、2007年相続に特化した事務所を開設し、現在も一貫して「円満相続と安心終活」をモットーに相続・終活の総合支援を行っている。相続・終活における問題の所在と解決の方向性を示す的確なマネジメントと親身な対応が好評を得ている。相続専門家講座の専任講師として相続専門家の育成にも助力している。日本相続士協会専務理事。
中島行政書士相続法務事務所・ナカジマ相続士事務所
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