死亡保険金の非課税限度額と税制大綱

生命保険の死亡保険金の非課税限度額は、現行の相続税法では「500万円×法定相続人の数」であることはご承知の通りだと思います。遺族の生活資金としての意味合いが強い死亡保険金については、相続発生前の生活水準をある程度保つという目的で一定の額までは非課税としているのは当然のことと思います。この考え方は「死亡退職金」についても同様です。

・国税庁HP:相続税の課税対象になる死亡保険金

https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4114.htm

 

この死亡保険金の非課税限度額について、金融庁が平成3年から今まで毎年、税制改正のたびに要望事項として挙げてるにも関わらず、いまだに通らない要望があるのをご存じでしょうか?平成29年の税制改正でも要望を出しています。25年以上出し続けていて却下をされているにも関わらず、来年度も出しました。

金融庁:平成2 9 年度税制改正( 租税特別措置) 要望事項

 

内容としては、現行の非課税限度額に、

「配偶者分×500万円+未成年の被扶養法定相続人数×500 万円」を加算すること

となっています。配偶者はもちろん、成人前の子供については教育資金等がかかるため、この点等を考慮して非課税限度額の拡大を長年要望していますが、大綱に掲載されることなく現在に至っています。ちなみにこの要望が通った場合の相続税の減収見込み額は、約70億円となっています。

 

一方で、平成23年度税制改正大綱では、法定相続人について「未成年者、障害者、相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた者」に限定をするという改正案(死亡保険金に係る非課税限度枠の制限)が出されました。こちらは非課税限度額を縮小する内容となっています。ご存知の方も多いと思いますが結局この改正案は見送られ、その後の税制改正大綱でも再掲されませんでした。

 

前者の要望は国税から、後者の要望は金融庁からの猛反対があり、成立に至っていないという話も聞いたことがあります。個人的な意見として申し上げれば、後者については大綱に掲載された改正案ですので、このように一度議論の場に挙がったということは、時期はともかく今後再び議論をされるのではないかと考えています。今後ますます日本の税収は下がっていくと思われますので、非課税限度額に何らかの手直しが入る可能性もあると思います。できれば金融庁の要望が通ってほしいのですが。

このページのコンテンツを書いた相続士

澤田 朗
澤田 朗
相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。

相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。

また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

FP EYE 澤田朗FP事務所

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