遺言書があったがために…。その2

前回は、公正証書遺言の作成方法についてお伝えしましたが、今回はこの遺言書があったがために、相続人間で不公正な遺産分割をすることになってしまった2つの事例をお伝えします。

まず2つの事例に共通しているのは、公正証書遺言が作成されたのが被相続人となる方が亡くなる数か月前で、作成された場所が被相続人となる方が入院していた病院のベッドの上だということです。遺言者が公証役場に足を運んで作成するのが基本ですが、入院中や自宅療養中の場合等公証役場へ行くのが困難な場合には公証人に遺言者のもとへ来てもらい、作成することも可能となります。

 

また遺言の内容が、1つめの事例は遺言者母親・相続人2人の子(姉弟)に対して、財産の全部を姉に相続させるという内容(相談者は弟)でした。2つめの事例は遺言者父親・相続人4人(後妻・後妻の子・先妻の子2人)に対して、先妻の子2人には遺留分相当額の現金を相続させ、残りの財産は後妻の子に相続をさせるという内容(相談者は先妻の子)でした。特定の相続人に対して極端に偏った割合の財産を相続させるという内容となっていました。

 

ここからは推測の域を出ませんが、両方の遺言者とも重篤な病気を患い、意識はあるもののほぼ寝たきりの状態であったということで、特定の相続人が財産に目がくらんだのか、自分に有利な内容で遺言をあらかじめ作成しそれを遺言者に読み聞かせ、それに頷くかたちで作成されたのではないかと勘繰ってしまうような内容です。

2人の相談者ともに遺言の存在を知らず、親の死後に姉や後妻の子から遺言の存在を知らされたことや、相続発生前までは親子間・兄弟間に特にトラブルは無かったということなのでなおのことです。公証人や証人、さらには病床ということで主治医の立ち合いもあったはずなので正当な手順で作成されたと思いますし法的にも有効な遺言ではありますが、相談者にとっては何ともやり切れない、金銭的なことはもちろん精神的にもショックが大きい遺言となってしまいました。

 

では今回の2つの事例のように、重篤な病気で入院をしている方が公正証書遺言を作成するには、どのような手順が必要なのでしょうか。こちらについては次回お伝えしたいと思います。

 

(続く)

このページのコンテンツを書いた相続士

澤田 朗
澤田 朗
相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。

相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。

また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

FP EYE 澤田朗FP事務所

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