地籍調査の実際 その2

地籍調査においては、土地の所有者・役所の担当者・測量業者が一組となって境界杭の確認などを行っていきますが、幸いクライアントの土地については公図のほか、過去に作成された地積測量図もありましたので、それをもとに隣地の方との確認作業を行いました。ほとんどの箇所に境界杭があったのですが、一部杭が無い箇所があり、その部分については隣地の方と話し合いをして双方が納得したかたちで境界を確定することができました。

 

クライアント自身の土地についてですが、自宅部分と駐車場部分の地番が分かれていて、その部分の境界についても確認をしたのですが、駐車場部分の土地の登記上の地積が、実際の地積よりも大きく、登記上は駐車場と自宅の境界が自宅部分の土地まで入り込んでいることになっていました。将来駐車場部分を売却・活用する際に不便が生じないためにも、実際の利用形態に合わせて自宅と駐車場部分の境界の更生を依頼しました。

 

隣地の方との確認作業も滞りなく進み、午前中に始まった調査も正午過ぎには終了したので、有給休暇を取ったクライアントも拍子抜けをしていたのですが、クライアントの西側の隣地の方と、さらにその西側の隣地の方との調査が終わっていないという話が入ってきました。結局その日には話し合いがまとまらず、後日クライアントが聞いた話では杭が無い一部の境界を巡って、双方の意見が食い違っていたということでした。

 

あくまでも憶測ですが、住宅地の境界ですのでおそらく双方が主張する境界の誤差は大きくても1メートル、実際には数10センチの世界だと思います。これまでの双方の人間関係やその土地に対する所有者の想いなど色々な事情があり、他人から見れば小さなことでも当事者としては譲れない何かがあると思いますので、双方が納得するまで境界を確定しなくても良いと思いますが、それによって様々なデメリットが生じることにもなります。

 

地籍調査によって境界が確定できなかった場合には「筆界未定」として調査が終了することになります。登記上はどのように表示されるかというと、例えば「5番1」と「5番2」の境界が確定できなかった場合、「地積図」には「5番1+5番2」と登記され境界の表示がされなくなります。調査前の公図の情報は無効とはなりませんので公図上の境界が有効となりますが、当事者にとっては話し合いがまとまっていない公図上の境界はほとんど意味がありません。

筆界未定のままの土地については、その後さまざまなデメリットが生じてきます。こちらについては次回のコラムでお伝えします。

 

(続く)

このページのコンテンツを書いた相続士

澤田 朗
澤田 朗
相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。

相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。

また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

FP EYE 澤田朗FP事務所

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