地籍調査の実際 その3

地籍調査によって境界が確定できなかった場合には「筆界未定」として調査が終了することになりますが、その後どのようなデメリットなどが生じるのでしょうか?

 

 

 

境界が確定していない土地ということは、隣地との揉め事が残っているという土地ということで、当事者以外にとってもあまり購入したいとは思わないので資産価値は相対的に下がります。売却する意思もないので、そのまま保有していれば良いかというと、自分たちの世代はそれで良くても、世代が変わり隣地を含めて当事者同士の世代交代が進めば、いずれは売却という選択肢も出てくるかもしれません。事情も分からないまま次世代に土地の相続が進み、関係者が増えていくことによって揉め事も火種が大きくならないとも限りません。土地の境界があいまいな場合には、できれば自分たちの世代ではっきりとさせた上で、次世代に資産を残すようにしたほうが良いと思います。親族間でさえ揉め事が多い時代ですので、他人が関係してくると話がさらに複雑になると思います。

 

また、地籍調査が終わった後に境界が確定していない土地については、その後当事者同士で境界を確定することができますが、登記費用や境界確定に必要な費用(測量や鑑定費用)等はすべて実費負担となります(地籍調査に関する費用については、実費負担はありません)。

 

確定までの作業や手続きもかなりの労力が必要で、具体的には隣地の所有者全員の立会いのもと、あらためて境界を確認・確定させた後、境界標を埋め込む作業が必要となります。さらにあらためて測量をして測量図に実印で境界確認の証明をもらい印鑑証明書の添付をしたうえで、法務局に地積更生の登記を申請します。測量には不動産鑑定士に依頼する費用のほか、登記費用や司法書士費用がかかりますので、境界確定までには時間や手間のほかに費用負担も大きくなります。

 

以前のコラムでもお伝えいしましたが、地籍測量は全国的に見ても進捗率はまだ低いですが、境界が確定していない土地については、このような地籍調査等をきっかけに確定をさせ、次世代に揉め事という負の遺産をのこさないようにしておいたほうが良いと思います。所有する土地の大小に関わらず、日本全国で起こり得る問題ですので、相続士としてお客様への助言・アドバイスが必要だと考えます。

このページのコンテンツを書いた相続士

澤田 朗
澤田 朗
相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。

相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。

また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

FP EYE 澤田朗FP事務所

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