生命保険業界の今後と顧客に与える影響
前回、生命保険商品の予定利率が引き下げられることで、今後の各保険会社の商品ラインアップが大きく変わっていき、相続対策で活用する保険も今までとは変わってくるだろうということをお伝えしました。今後は、より顧客のニーズに合った商品を販売しなければ、現在40数社ある生命保険会社も淘汰されていく時代が来るのかもしれません。
このことは、生命保険を販売する側である「生命保険募集人」や「保険代理店」ついても同様のことが言えます。現在約120万人いるといわれている募集人について、金融庁は多すぎると考えていて、この人数を今後数年かけて半分にしたいとも1/3にしたいとも考えているのではないか、とも言われています。
そのため、2016年5月に改正保険業法が施行され、顧客のニーズを把握したうえで提案をする「意向把握義務」や、重要事項の説明や虚偽説明の禁止などを定めた「情報提供義務」、複数の保険会社を扱っている場合には「比較推奨販売」を行うなど、今まで以上に顧客の立場に立った商品提案が義務づけられました。
それに伴い保険代理店にも、適切な情報提供や商品提案が行われているか、記録や保存が必要となり、また、従業員への教育体制も整備するよう求められるようになり、このような態勢が整備されていない代理店については、最悪の場合、保険業界から退場してもらうようになりました。
大手代理店についてはこのような整備は行われていますが、中小の代理店についてはまだまだ対応できていないところがあると思います。保険業法改正後は、金融庁は保険会社ではなく、直接保険代理店に監査に入れるようになりましたので、今後は態勢の不備等を理由に注意勧告が行われ、それでも改善されないときには最悪の場合、廃業ということになるのだと思います。
実際、一昨年あたりから中小の代理店どうしが合併をしたり、大手代理店が中小代理店を吸収するといった動きが活発化しています。今後も、自社では業法改正に対応しきれない代理店が、大手に吸収されたり廃業をしたりしていくものと思われます。
このようなことが起きると、今まで近くにあった代理店が無くなったり担当者がいなくなったりして、不便が起こる可能性もあります。顧客にとっては、保険会社や保険商品を選ぶだけではなく、きちんとした態勢が整っている代理店選びについても、今後ますます必要となってきます。
このページのコンテンツを書いた相続士
- 相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。
相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。
また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。
FP EYE 澤田朗FP事務所
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