もし数年のあいだに2回相続が発生したら?

今年お母さまが亡くなったお客様とお話をしている時に、「親戚から『3年前にお父さんが亡くなった時に相続税を払っているので、今回の相続税はあんまり払わなくてもいいかもしれないよ』と言われました。そんな事ってあるんですか?」という質問がありました。

 

結論から言いますと、お客様のお母様のケースではあてはまらなかったのですが、いくつかの条件を満たせば相続税の負担を少なくできることがあります。今回は、どのような場合に負担が少なくなるのか、またならないのかをお伝えしたいと思います。

 

■税負担が少なくなる条件とは?

短期間の間にいくつも相続が発生して、そのたびに相続税がかかった場合は、財産の額によっては相続人全体の税負担が大きくなるとともに、急激に財産が減少してしまうことも考えられます。このような負担を少なくするための制度が税法上にはあります。これを「相次相続控除」と言います。相次いで相続が発生した場合、条件にあてはまれば税負担を軽減します、という制度です。

 

・国税庁HP:相次相続控除

https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4168.htm

 

上記リンク先にもあるとおり控除が受けられる条件がいくつかありますので、今回のお客様の場合には条件にあてはまるかどうか、ひとつずつ確認をしていきましょう。

 

1.10年以内に2回の相続が発生した場合

いわゆる「一次相続」と「二次相続」が10年以内に起こったケースです。今回のお客様のお母様の場合、この条件にはあてはまりますので、まずはクリアして次に進みます。ちなみに「二次相続」のあとに「三次相続」が発生した場合には、この2つの相続の期間を見て10年以内であれば、こちらも条件にあてはまることになります。

 

2.次の3つの条件「全て」にあてはまる場合

(1)被相続人の相続人であること

例えば相続放棄をした人や欠格・廃除で相続権を失った人等はこちらには該当しません。今回のお客様のお母様の場合は相続人ですので、こちらの項目にはあてはまります。

 

(2)その相続の開始前10年以内に開始した相続により被相続人が財産を取得していること

今回のケースで言う「その相続」とは、亡くなったお母様の相続です。「10年以内に開始した相続」は、3年前に亡くなったお父様の相続です。また「被相続人」は、亡くなったお母様となります。ご自宅と現金を相続していましたので、「財産を取得していること」にあてはまりますので、こちらの項目についてもクリアしています。

 

(3)その相続の開始前10年以内に開始した相続により取得した財産について、被相続人に対し相続税が課税されたこと

前項と同様に「その相続」とは、亡くなったお母様の相続、「10年以内に開始した相続」は、3年前に亡くなったお父様の相続です。「取得した財産」とは、お父様が亡くなった時に「お母様が相続したご自宅と現金になります。

 

ここまでの項目についてはすべて該当しているのですが、最後の「被相続人に対し相続税が課税されたこと」についてあてはまらなかったため、今回はこの制度の適用を受けることができませんでした。「被相続人」は今回亡くなったお母様ですが、「相続税が課税されたこと」つまりお父様の相続の時に相続税を払ったかというとお母様は払っていません。

 

すでにお気づきかもしれませんが、お母様はお父様の相続の際に「配偶者の税額の軽減」いわゆる相続税の配偶者控除を使っていたので、相続税を負担することなく財産を相続していました。この最後の項目に該当しなかったため、今回お伝えしている「相次相続控除」は適用することができませんでした。

 

では、どのような場合にこの控除を受けることができるのでしょうか。こちらについては次回お伝えしたいと思います。

このページのコンテンツを書いた相続士

澤田 朗
澤田 朗
相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。

相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。

また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

FP EYE 澤田朗FP事務所

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