「相次相続控除」が適用されるのはどんな場合?
前回のコラムでは、「相次相続控除」が適用される要件についてお伝えしました。
結果的には、お客様のお母様はこの控除は受けられなかったのですが、今回はどのような場合に控除が受けられるのか、その場合の控除額はどれくらいなのかをお伝えしていきます。
■縦の関係・配偶者以外の横の関係の場合
例えば前回お伝えしたお母様のケースでは、先にお母様のお父様が10年以内に亡くなった時に、お母様が相続税を払っていた場合、また別のケースでは、兄弟姉妹しか相続人がいなく、相続が発生したごとに税負担が発生した場合等が考えられます。つまり直近で亡くなった人(被相続人)がその前の相続で税負担をしていた場合、一定の額を被相続人の相続人の税額から控除しますという制度です。
では次に、どのくらい税負担が軽減されるかを確認してきましょう。
こちらは前回お伝えしたリンク先に計算式があるのですが、
・国税庁HP:相次相続控除
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4168.htm
直近の相続における各相続人の「相次相続控除」の額は、
A×C/(B-A)[求めた割合が100/100を超える場合は100/100とする]×D/C×(10-E)/10
A:今回の被相続人が前の相続の際に課せられた相続税額
この相続税額は、相続時精算課税分の贈与税額控除後の金額をいい、その被相続人が納税猶予の適用を受けていた場合の免除された相続税額並びに延滞税、利子税及び加算税の額は含まれません。
B:被相続人が前の相続の時に取得した純資産価額(取得財産の価額+相続時精算課税適用財産の価額-債務及び葬式費用の金額)
C:今回の相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得したすべての人の純資産価額の合計額
D:今回のその相続人の純資産価額
E:前の相続から今回の相続までの期間 1年未満の期間は切り捨てます。
となります。
計算式だけ見るとさっぱり意味がわかりませんが、直近で亡くなった被相続人が、その前の相続の時に払った相続税のうち、
(今回の相続からその前の相続までの経過年数)×10%
を減額した額を、今回の相続税から控除しますよ、という制度となっています(経過年数の1年未満は切り捨てます)。言い方を変えますと、直近の相続からその前の相続までの年数があまり経ってない場合には控除額も大きくなります。
なおこの制度は申告をしないと適用されない制度ですので、不幸にして相続が続き、各項目に該当する場合には税理士等の専門家にご相談のうえ、申告を行ってください。
このページのコンテンツを書いた相続士
- 相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。
相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。
また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。
FP EYE 澤田朗FP事務所
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