数次相続における相続手続き
前回お伝えした一郎さんの相続の分割協議がまとまった場合の遺産分割協議書には、次のようにそれぞれの地位を記載します。
↓ 前回のコラム ↓
・相続一郎:被相続人
・相続花子/次郎/三郎:相続人
・相続太郎:相続人兼被相続人
・相続良子/一太郎/二太郎:相続人兼被相続人である相続太郎の相続人
一郎さんの遺産分割協議が終了し相続手続きが完了した後に、太郎さんの相続について、良子さん・一太郎さん・二太郎さんの3人で話し合いを持つことになります。一郎さんから相続した財産があれば、その財産と太郎さん固有の財産をあわせて分割協議行います。
今回は2つの相続手続きが完了していない例ですが、中にはもっと多くの相続手続きが完了していないまま現在に至っているケースもあると思います。直接は関わっていないのですが、私のクライアントの話で、「母親の代の相続で、母親の兄弟7人のうち3人が亡くなっていて、そのうち2人は子どもがいなかったため兄弟にも相続分があり、さらに遺産分割協議をしないまま他の兄弟もその後亡くなって10年くらい経ちました‥‥。」という話も聞いたことがあります。先日ようやくすべてが終わったようですが。
複数の相続がそのままになっていると、現金を分けるだけでも相当な労力と時間がかかりますが、不動産が絡むと話はさらに複雑になります。誰が相続するかという話ももちろんですが、はじめの相続から最後の相続まで、順を追って登記をしていかなくてはなりません。登記費用のほかに報酬がかかりますが、このような複雑な登記については相続に強い司法書士さんにお願いをしたほうが賢明だと思います。
ちなみに、数次相続において不動産を相続した場合、本来なら複数の登記が必要なところを、1回の登記で済むケースがあります。例えば今回の例でいうと、あまりありえないことですが一郎さんの相続財産である土地Aを太郎さんと次郎さんで1/2ずつ相続したとしましょう。その後、太郎さんが相続した土地Aの1/2を良子さんが相続した場合には、良子さんが取得した土地については、「一郎さん→太郎さん→良子さん」という順番で、2回の登記が必要となります。
それに対して、土地Aを太郎さんが単独で相続した場合には、「一郎さん→太郎さん→良子さん」のうち「太郎さん」部分を省略して「一郎さん→良子さん」と、1回の登記で済むことになります。
このように不動産で複数回の相続が行われたとしても、最初の相続と、最初と最後の間の相続である「中間の相続」が単独で行われた場合には、最初の被相続人から最終の相続人に直接所有権の移転ができることになります。単独で相続をする理由が遺産分割協議によるものか、他の相続人の相続放棄によるものなのか等、理由は問いません。また、最後の登記については単独である必要はありません。こちらもあまりないケースですが、今回の例では土地Aを良子さん・一太郎さん・二太郎さんの共有名義にすることも可能です。
通常の相続でも悲しみがまだ癒えないなかで行うもので、それなりの労力も時間もかかるものです。期せずして起こってしまうケースもありますが、数次相続の場合にはさらに色々な負担が大きくなることが考えられます。数次相続になることはできるだけ避けていただきたいと考えます。
このページのコンテンツを書いた相続士
- 相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。
相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。
また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。
FP EYE 澤田朗FP事務所
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