がけ地が含まれる宅地の相続税評価額は?
1つの宅地に平たんな箇所と傾斜となっている箇所がある場合、相続財産としての土地の評価はどのように行うのでしょうか。このような土地は「がけ地等を有する宅地」として評価するのですが、通常の土地とは少し評価方法が変わります。
山林や丘陵地帯を開発して住宅地にする場合、一定の面積を平たんにすれば住宅を建てられますので、コストの面から宅地の一部従来の傾斜のままになっている場合があります。
このような土地は傾斜部分に建物が建てられない等、通常の土地と比較して利用価値が下がりますので、傾斜部分について評価減ができるのが「がけ地等を有する宅地の評価」です。
ただし、この評価方法は「宅地」の中に「がけ地等」がある場合に限り適用可能です。相続発生時に宅地利用されていた土地に限られますので、農地・山林・雑種地等に該当する土地にはこの評価方法は適用できません。
どのように評価する?
「がけ地等を有する宅地の評価」は次の手順で行います。
・国税庁:がけ地等を有する宅地の評価
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/20.htm
1.宅地全体の地積の確認
全部事項証明書(登記簿謄本)で地積を確認する、現況の地積を測量する等、宅地全体の地積を確認します。
2.がけ地部分の地積を計測
がけ地部分の測量を行う、あるいは平たん部分の地積を測量後に宅地全体の地積から差し引き、がけ地部分の地積を求めます。
3.がけ地の方角の確認
がけ地の方角によって「がけ地補正率」が変わりますので、方位計等で方角を確認します。
4.「がけ地割合」の計算
「がけ地部分の地積/宅地全体の地積」でがけ地割合を計算します。
5.がけ地補正率をもとに宅地を評価
「1㎡あたりの宅地の評価額×がけ地補正率」で相続税評価額を計算します。
・国税庁:がけ地補正率表
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm#a-hyou_08
例えば路線価200,000円の道路に面している地積400㎡の宅地、がけ地部分の地積が100㎡、がけ地が北向きの宅地は下記のように評価を行います。
・100㎡/400㎡≒0.25
・がけ地割合0.20以上でがけ地北向きの補正率:0.88
・路線価200,000円×0.88=176,000円
・176,000円×400㎡=70,400,000円
なおがけ地は一方向だけではなく複数方向ある場合もありますので、この場合には次の方法でがけ地補正率を求めます。
【例】
全体の地積400㎡のうち、西向き・南向きにそれぞれがけ地が100㎡ある場合
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/22.htm
全体の地積に対するがけ地部分の各方角別のがけ地補正率を求めて、それぞれのがけ地補正率を方角別のがけ地の地積で加重平均する。
・がけ地割合:(100㎡+100㎡)/400㎡=0.50
・がけ地補正率:西向きがけ地0.78×100㎡+南向きがけ地0.82×100㎡/全体のがけ地200㎡=0.80
【例】
全体の地積400㎡のうち、がけ地100㎡が南東を向いている場合
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/03/21.htm
それぞれの方位のがけ地補正率を平均する。
・がけ地割合:100㎡/400㎡=0.25
・がけ地補正率:(南向きの補正率0.92+東向きの補正率0.91)/2=0.915
→小数点二位未満切捨:0.91
・がけ地部分を減額できる要件
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/04/26.htm
土地にがけ地がある場合には相続税評価額を減額できますが、宅地として利用している土地であることが減額できる要件となります。なお宅地として利用している場合でも、がけ地部分が雑種地や山林と判断される場合には、その部分の土地は宅地と分けて評価する必要がありますので、がけ地補正率は適用できません。また前述のように、がけ地が2方向にある場合の計算や方角の判断等が必要となりますので、通常の土地よりも評価方法は複雑となります。
このページのコンテンツを書いた相続士
- 相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。
相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。
また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。
FP EYE 澤田朗FP事務所
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