縄伸び・縄縮みはなぜ存在するのか?

「縄伸び」「縄縮み」という言葉をお聞きになったことがあると思います。土地の地積は一筆ごとに法務局に登記されていますが、実際に測量をすると登記されている地積と違う場合があります。このように公簿地積と現況地積が違う状態で、現況地積のほうが大きい場合を「縄伸び」、現況地積のほうが小さい場合を「縄縮み」と呼んでいます。

測量は江戸時代にも行われていましたが、当時は縄を使って測量をしていました。その縄に例えて、実際の地積が公簿地積よりも「縄が伸びている」、反対に実際の地積が公簿地積よりも「縄が縮んでいる」、という表現が今でも使われています。

当時の測量の目的は現在のように境界確定や地積確定ではなく、年貢などの額を決めるために行っていたという側面があります。そのため、実際の地積より小さく申告をしていたケースや、現在よりも測量技術が低かったことなどが、縄伸び・縄縮みが起きた原因の一つだと考えられます。

1960年以降に分筆された土地は測量を行い地積測量図が備え付けられています。このような土地の地積の信頼度は高いですが、それ以前に分筆した土地やこれまで分筆をしていない土地、地籍調査や地積更正を行っていない土地については今でも地積測量図がありません。そのため昔からの測量結果が現在まで残っていて、公簿地積と現況地積に違いがある可能性があります。

また、地積測量図があっても、縄伸び・縄縮みが残っている可能性があります。2005年までは「残地法」と呼ばれる地積の算出方法がとられていました。

この方法は、一筆の土地を二筆に分筆して売却する場合、売却する土地は測量をして地積を確定させますが、売却をしない土地(残地)は測量を行う必要が無く、元の一筆の地積から売却する土地の地積を差し引いて新しい地積とする方法です。

ただしこの場合、そもそも分筆前の地積に縄伸び・縄縮みがあった場合、残地についても同様のことが起こります。2005年以降は、分筆する場合にはすべての筆を測量することになりましたが、2005年以前に分筆された土地は、残地部分に縄伸び・縄縮みがある可能性があります。

■売買時や相続発生時には要注意

売却時に測量したら公簿地積と違っていた、という場合には売買価格に影響が出ますし、新たに建物を建築する場合にも地積が違えば建てられる建物の大きさも変わってきます。固定資産税等にも影響し、実際よりも税負担が多かったということも起こり得ます。

土地を相続する時の相続税評価額にも影響が出てきます。土地の相続税評価は、路線価地域であれば路線価に地積を掛けて計算しますが、様々な減額要因があれば評価額が下がり最終的な評価額が決まります。この計算の根拠となる地積が違っている場合、他の財産を含めた課税遺産総額や相続税額にも影響が出てきます。土地の評価額は相続財産に占める割合が大きくなる場合がありますので、相続時には現況測量を行い、公簿地積との差異を確認することで、税負担を軽減することもできます。

このように公簿地積との差異の大きさによっては影響が大きくなる場合もありますので、地積測量図が無い場合には、まずは縄伸び・縄縮みがあるかどうか現況測量を行い、必要に応じて地積更正等を行うことで、売買・相続時に備えることができます。

このページのコンテンツを書いた相続士

澤田 朗
澤田 朗
相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。

相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。

また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

FP EYE 澤田朗FP事務所

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