任意後見契約の効力発生後の、任意後見人の役割は?

任意後見契約は自分の判断能力が正常なうちに、公正証書で任意後見人と契約を締結する制度です。判断能力が低下した場合には申立てを行うことで任意後見契約の効力が発生しますが、今回は任意後見人にはどのような役割があるのか、また任意後見人を監督する「任意後見監督人」は何をするのか、といったことをお伝えします。

任意後見人の職務は?

「任意後見監督人選任の申立て」を行い、任意後見監督人が選任されると、受任者である任意後見人は契約の内容どおりの職務を行なえるようになります。逆に言うと、任意後見人を監督する監督人が選任されるまでは職務を行えません。

任意後見人は委任者本人の意思を尊重することはもちろん、本人の心身の状態や生活状況に配慮して、任意後見契約時に結んだ契約内容に基づき後見事務を行います。その内容は個々の契約内容によって変わってきますが、主に次の「財産管理に関する法律行為」と「身上監護に関する法律行為」等が挙げられます。

1.財産管理に関する法律行為と財産目録の作成
預貯金の管理・払い戻し・不動産等重要な財産の処分・遺産分割・賃貸借契約の締結・解除等があります。このような財産管理に関する法律行為がある場合には、本人名義の財産を調査し財産目録を作成し、任意後見監督人に提出する必要があります。

また任意後見人は、任意後見監督人に財産管理の状況等、どのように後見事務を行ったかを報告する必要があります。本人の現状や財産・収支状況について日々管理・把握し、領収書や取引に関する書類の保管を義務付けられています。

2.身上監護に関する法律行為
介護に関する様々な契約・施設に入所する際の契約・入院や医療費の支払い等医療契約の締結・解除等があります。このような本人の身上監護に関する法律行為を行った場合にも、その契約書のコピー等を保管しておく必要があります。

「任意後見監督人」の役割

それに対して任意後見監督人は、任意後見人が行う様々な後見事務を監督する役割があります。任意後見人が適正に後見事務を行っているのかを定期的にチェックし、家庭裁判所に定期的な報告を行います。

万が一、任意後見監督人の監督の過程で任意後見人の事務に「不正な行為」「著しい不行跡」等が判明した場合には、任意後見人の解任等も検討されます。具体的には財産の横領・使い込み・不当な処分・職務の未遂行等が挙げられ、委任者本人の財産や身体を守るための様々な監督・チェックが行われます。

このように任意後見監督人には、任意後見人の不正・不当な行為を抑止する役割があります。

任意後見契約の終了

任意後見人によって日々の後見事務が行われ、任意後見監督人がその行為を定期的にチェックしていきますが、次の場合には任意後見契約が終了することになります。

1.任意後見契約の解除
任意後見監督人が選任される前であれば、公証人の認証を受けた書面での契約の解除ができますが、任意後見監督人が選任された後に解除をする場合には家庭裁判所の許可が必要となります。

2.任意後見人の解任
任意後見監督人の監督を通じて任意後見人の不正な行為等、任務に適しない事由が判明した場合には、任意後見監督人等が家庭裁判所に請求することで任意後見人を解任でき、契約が終了します。

3.法定後見(後見・保佐・補助)の開始
任意後見監督人が選任された後に法定後見開始の審判がされた場合には、任意後見契約は当然終了となります。

4.本人又は任意後見人(任意後見受任者)の死亡・破産手続き開始の決定等
任意後見契約の当事者のどちらか一方が死亡した場合や破産手続きを行った場合には、契約が終了します。

このように、任意後見契約の効力が発生した後は任意後見人・任意後見監督人それぞれに役割があり、委任者本人の財産・身体を守るための様々な行為が行われることになります。

このページのコンテンツを書いた相続士

澤田 朗
澤田 朗
相続士、AFP
1971年東京都生まれ。FP事務所FP EYE代表。NPO法人日本相続士協会理事・相続士・AFP。設計事務所勤務を経て、2005年にFPとして独立。これまでコンサルティングを通じて約1,000世帯の家庭と関わる。

相続税評価額算出のための土地評価・現況調査・測量や、遺産分割対策、生命保険の活用等、専門家とチームを組みクライアントへ相続対策のアドバイスを行っている。設計事務所勤務の経験を活かし土地評価のための図面作成も手掛ける。

また、住宅購入時の物件選びやローン計画・保険の見直し・資産形成等、各家庭に合ったライフプランの作成や資金計画のサポートを行っている。個人・法人顧客のコンサルティングを行うほか、セミナー講師・執筆等も行う実務家FPとして活動中。

FP EYE 澤田朗FP事務所

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