お一人さま支援の仕組みのつくり方 Vol.2
さて、前回ではお一人さまにとっての、身元保証と死後事務の必要性について述べました。
それではなぜそのようなものが必要なのでしょう。なぜならば今日、何かいろいろな組織や制度があってその内のどこかがやってくれるようにも思えるからです。
皆様ご存知のように高齢者を支える社会資源としては、社会福祉協議会、市区町村の高齢者窓口、地域包括支援センターとケアマネージャー、居宅介護支援事業所とケアマネージャー、ヘルパーと呼ばれる人々、成年後見制度における任意後見人、あるいは法定後見人、民生委員、それにボランティアの人々と多彩を極めています。ですから、この内の誰かがやってくれるのだろうと思いがちです。
ところが、これらの人々の活動が完全にストップする時期がきます。
それは本人の(お一人さまをはじめとする本人の)死です。
この時点で、上記の人の誰かに「公正証書による遺言」がなされていない限りこれらの人々のサポートは一斉に終了してしまうのです。
つまり、法律はあくまで生きている人のものであって、人の死後のことまでやること(あるいはやってやること)は違法行為になるよう、日本の法体系は仕組まれているのです。
成年後見人でさえ本人の死後はサポートはできません。
それではなぜ生前における死後についての委任契約、つまり死後事務委任契約が可能なのでしょう。
その法的根拠についてですが、それは1992年の最高裁の判決でした。
この判例が決定打となりその後、民法897条の本人の指定による祭祀主宰者の決定がクリアーされ、死後事務の仕事への報酬については民法1002条の負担付遺贈規定によりクリアーされていきました。
つまり、24年ほどの歴史しかないとはいえ、法律的根拠は理論的に整えられたのです。
これによって、「遺書」がある場合と「死後事務委任契約書」がある場合は法的正当性をもつようになったのでした。
さて、前回では、今日の65歳以上の高齢者のお一人さまは600万人で4年後には750万人になり、それ以後もそれほど少なくなることはないだろうと述べました。
といいますのは、その根拠として生涯未婚率(50歳時点)が男性23・4%、女性14・1%に達しているからです。(15年国勢調査による)。つまり、男性の3割、女性の2割が生涯未婚になると予測されているのです。当然のことながら、この方々が将来、お一人さまとして登場してくるのは明らかなことです。
それではこのように増え続けるお一人さまにはどのような備えが必要なのでしょう。
まとめてみましょう。
次回では、このような「備え」についてくわしく述べていくことにしましょう
このページのコンテンツを書いた相続士
- 田代尚嗣(たしろなおつぐ) 仏教ジャーナリスト・終活士
昭和42年学習院大学 法学部卒。リーダーズダイジェスト社、サイマル出版会を経て、現在、冠婚葬祭互助会、葬儀社、寺院、税理士向けの小冊子などを出版販売する会社経営(アピカル・プランズ社)のかたわら著述業。季刊『霊園情報』元編集主幹。ここ数年は仏教関係書を多数執筆。
また、高齢者問題にも詳しく、「エンディングノート」と呼ばれる、自分に万が一のことが起こったときのために、家族に伝えておくべき事項をノート形式でまとめておく冊子を、日本で最初に広めたことでも知られている。
主な著書として『面白いほどよくわかる仏教のすべて』(日本文芸社)、『はじめての仏教入門』『お墓のすべてがわかる本』(以上新星出版社)、『いまから始める「シニア人生」安心計画』(三笠書房)など多数。
ここ数年は、小冊子購入先の依頼に限り「エンディングノートがなぜ必要なのか」、「日本仏教の行く末」、「独居高齢者支援の仕組みのつくり方」などのテーマについての講演活動も行っている。
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