お一人さま支援の仕組みのつくり方 Vol.3
それでは今回は皆様おまちかねのビジネスの面から、その「概要」を述べてみましょう。
今日、このような支援活動を行っている団体は約100。一昨年の某雑誌の12月号から翌年の春にかけての連載で、私がこの件について紹介した時点では20団体でした。
本年、平成29年度には多分、急激に増えて500社から600社ぐらいになるでしょう。なぜなら、平成28年末の時点で全日本冠婚葬祭互助協会(加盟社250)と、そのアウトサイダー50社、それに私の知る限りですが葬儀社の数十社が参入の準備の研究に入ったという情報をもっているからです。
その他にも研究しているところも多いことでしょう。つまり、ここ2~3年がこのビジネスの勝負所でしょう。
いくつかのすでに実施している団体の業務及び業績内容についてですが、その平均値をとってみれば契約時支払金と主に死後事務についての預託金の合計金額は200万円前後(特別な見積り内容、日々の見守り支援にかかる費用は別途)です。この金額が契約時に支払われます。そして、今日までの繰越金が1億5千万~2億、寄付金が2億から3億、この現状が比較的大手(それでも従業員数が数十人規模)の実態です。ここで「寄付金」という言葉が出てきましたが契約対象者がお一人さまですので、財産があったとしても相続人がいない場合もあります。そのような場合は、支援してくれている団体に寄付したいという希望が多いことも事実なのです。
ですから、このような場合は公正証書遺言書をつくり、法的な万全の処置をとった上で寄付として団体が受領することもあるのです。
そして、これは支援団体が思わぬ損失を被った場合の補填につかわれます。
さて、今日の最も古い団体(16年前設立)では今日までに4600人ほど支援し、現在は2600人ほどの生存する契約者に支援しているというのが現状です。一人の支援団体の担当者が契約者の60人~70人を担当し、それに対する夜間の仕事は月3回ほど、昼間の仕事は月に10~12回ほどというのが担当者の実働の状態のようです。そして、新しく委任契約を結ぶ委任者の人数は一人の担当者当り年間9人~11人程度のようです。
さて、前述した通り、今年はこの仕事に従事する団体が急増するだろうと申しました。
それでは、葬儀業界とその需要と供給の関係について比較してみましょう。
今日、それを担当する業者としては互助会が300社、葬儀社4000社、僧侶30万人が、死者130万人(2015年度)の葬儀を実施することで食べています。
それに対してお一人さまは今日でもうすでに600万人、5年後には750万人になると推測されているのです。
そして、その後もそれほど減ることはないだろうとも申しました。今年、支援団体が急増したとしても、需要と供給がそれであってさえ、極めてアンバランスな状態であることはこのことでも明白です。
それでは、次回はこの支援サービスについて必要な徴表類について述べていきましょう。
このページのコンテンツを書いた相続士
- 田代尚嗣(たしろなおつぐ) 仏教ジャーナリスト・終活士
昭和42年学習院大学 法学部卒。リーダーズダイジェスト社、サイマル出版会を経て、現在、冠婚葬祭互助会、葬儀社、寺院、税理士向けの小冊子などを出版販売する会社経営(アピカル・プランズ社)のかたわら著述業。季刊『霊園情報』元編集主幹。ここ数年は仏教関係書を多数執筆。
また、高齢者問題にも詳しく、「エンディングノート」と呼ばれる、自分に万が一のことが起こったときのために、家族に伝えておくべき事項をノート形式でまとめておく冊子を、日本で最初に広めたことでも知られている。
主な著書として『面白いほどよくわかる仏教のすべて』(日本文芸社)、『はじめての仏教入門』『お墓のすべてがわかる本』(以上新星出版社)、『いまから始める「シニア人生」安心計画』(三笠書房)など多数。
ここ数年は、小冊子購入先の依頼に限り「エンディングノートがなぜ必要なのか」、「日本仏教の行く末」、「独居高齢者支援の仕組みのつくり方」などのテーマについての講演活動も行っている。
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